その219 自宅に他人が居るということ

 介護職員って、他人様の「家の中」までおじゃまするお仕事ですね。

 筆者はグループホームという「施設」で勤務しましたが、ホームは入居者さんが家賃を支払って生活している「他人の家」。文字通りのホームです。

 訪問介護ならばもっとハッキリと他人様の家に上がり込むことになります。仕事場が他人様の家の中、というのもなかなか珍しい仕事かもしれません。

 筆者は若いころ新聞配達などして、集金で玄関先までおじゃますることはありましたが。仕事がずっと他人の家の中というのは介護職員が初めてで、勤め始めは大変緊張した覚えがあります。
 介護がどうとかいう前に、やはり常識的に他人様の家ですからねwなにかと気を遣うのも当然ですよね。

 …さて、逆にホームの入居者さんや、訪問介護を受ける利用者さんの方はどうだったんでしょうか。「自分の家」だからとどっかり構えておられるのでしょうか?

 うーん、いや、やっぱり利用者さんは利用者さんで気を使いますよね(^^;)。他人が来るんですもんね…。

 私事でスミマセンが筆者は去年の秋から、自宅のあちこちの修繕(リフォーム)を業者に頼んでおりました。
 いろいろ気になるところを、思い切って一通り直そうと職人さんに見てもらって必要な作業を割り出したところ、トイレの床や壁紙、細かい壁のへこみの修理、屋根や外壁の塗装などなど多岐にわたり…結局すべて終わるまで数か月を要しました。

 その数か月、ずっと「他人様が家の内外を行き来している」状態だったんですね。当たり前ですが。
 
 するとこれはですね、想像以上に気を遣うものだなあとよくわかりました(^^;)。

 まず朝、作業に来られた職人さんに一応あいさつくらいはしなきゃいけませんから、もちろんその時間には起きていなければいけません。寝ぐせなんかついていたら恥ずかしいですから顔くらい洗わなければなりません。玄関が汚いと失礼に当たるから飼い猫の抜け毛くらいは掃き出しておきます。
 まあいつでも洗顔と掃除くらいするんですが、その作業に「緊張感」が生まれまして…w。

 筆者が朝早くから出かけているときは「勝手に入って作業を進めてくれてよい」と事前に決めてはあるのですがやはり完全に勝手にはできないというのが人情で、「いまから作業をはじめます」の電話やメールが入ってきます。

 自宅で、筆者がこうして文章を書く仕事をしているときでも、窓の外を職人さんが横切って行かれます(笑)。正直、気にならないと言ったらウソになる。気になります(^^;)。
 休憩しようとしても、窓の外で働いている人がいると思うとジャージで寝っ転がるという訳にはなかなか行きません。

 こちらが窓を開けたら近くで作業中だったりして互いに「スミマセン」「いえスミマセン」とよくわからないけどとりあえず謝罪合戦がはじまってしまったり…w。

 職人さんの方ももちろん気を使っておられます。なにしろ他人の家だもので作業のジャマだなと思ったものでも勝手に動かせませんから。庭に置いてあるバケツひとつどかすにもわざわざ声をかけたり、事後報告をしたり…仕事とはいえ大変ですねえ、他人の家というのは。

 こう書くといやいや客なんだし、場所は文字通りホームなわけだし立場は上だろうと思われるかもしれませんが。

 頼んでいるのが「家の修理」だけにですね、いくら客とはいえ緊張感はあるんです。自分では直せませんからね(^^;)職人さんを大事にしないと、何かの拍子に嫌われて「途中でやめます」なんて話になったら(そんなことはないでしょうけど極端な話)もうどうしようもないですからね。
 なので数か月、だんだん慣れてもくるのですがある程度の礼儀はわきまえておかなきゃなあという気持ちは常にありました。

 きっと、グループホームの入居者さん、訪問介護の利用者さんももこういう気持ちがあるんじゃないかなあと想像します。

 基本的には他人ですからもちろん気を遣う。
 自分にできないことを頼んでいるのだから、客(サービス利用者)とはいえ慎重にもなる。
 あるていど打ち解けてきても、根底にはやはりそういった緊張感があるのだと思います。

 もちろん人によって性格やコミュニケーションの仕方は様々ですが。いくら明るく対人関係が上手な方でも、全く負担がないとは言えないでしょうね。

 そのうえ、病気や認知症で心身が弱った状態。「毎日、家の中に他人がいる緊張感」はかなりの負担があるんじゃないかなあと想像いたします。
 
 家のリフォームなら夕方には帰りますし、数か月で終わりますが。入居型のホームだったらもう「ずーっと」他人が居るわけですからね。

 まあそうした対人関係・心や生活の緊張感もリハビリの一環になるなどと教科書には書いてあるのですが(^^;)これはやはりしんどいことではあるなあと、当たり前ですが再認識した次第です。

 はじめて他人様を迎える側になってつくづく感じましたもので、ここに書き記しておきます。忘れないようにしたいものです<(_ _)>。