その11 ある新聞記事より
熊本・大分地震から一ヶ月が経ちました。ことに近年、毎年のように自然災害が続いております。以下は私が介護職員になった2012年以降おこった自然災害について描いたマンガの一部ですが、その多さ、被害の大きさには改めて驚いてしまいます。
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災害時にはさまざまな救援活動がなされますが、介護職はいったいどういうことができるのか…、考えていたところ、こんな記事を見つけました(読売新聞、4月24日12版、社会保障面より)。
ある避難所での様子です。
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「ご飯まだ?」おにぎりを食べたばかりの白髪の男性が、けげんな表情で尋ねた。「すぐ持ってきますね」。職員が笑みを返すと、男性は安心した表情で床に敷かれた布団に戻り、寝付いた様子だった。
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このような対応は、介護職員なら日常ふつうに行っています。「認知症で記憶がない言動を、職員が否定しない」これは権利擁護(虐待防止)の研修で就労前に必ず教わることです。わざわざ記事になったのは、記者の目には新鮮に映ったからでしょう。
しかし確かに、認知症の人と関わったことがなければ「さっき食べたばかりなのに、何を言ってるんだ」と思っても仕方ありません。「厄介な人がいるなあ…」と思われては、助け合うべき避難所生活が余計に辛いものになってしまうでしょう。
上記の記事の続きには、東日本大震災時「避難所での認知症の人」の様子も書かれていました。やはり環境の急激な変化により、混乱をきたし、ほかの避難者とトラブルになるケースも非常に多かったようです。
避難所生活では知らない人同士が着の身着のまま、同じ屋根の下にすごさなければなりません。そんなときに言動が理解できない、夜も眠らず歩いている、自分のものと他人のものの区別がつかない…たとえ病気からくる症状であっても、知らない人からすれば恐怖の対象になってしまうでしょう。認知症でない人だって災害という非常事態に混乱し、余裕のない状態でいるのですから、まったく無理からぬことです。
しかしそんな中でも、引用記事のように「認知症のことが少しわかっていて、対応できる人」が一人でもいたらどうでしょう。認知症の人も少しは安心できるし、周りの人も「なんだ、そういう病気なのか」「悪気があるんじゃないのか」とわかってくれるのではないでしょうか。周りの理解があれば、トラブルも少しは減らせるはずです。
『恐怖は常に無知から生じる』はアメリカの詩人エマーソンの有名な言葉ですが、本当に「少しでも知っている」ことがどれだけ大切か、あらためて感じます。引用記事を読むだけで、「さっき食べたでしょ!」と言っても無意味なことがわかるのですから。
普段はあまり意識しませんが、介護職員って「けっこう凄いことを平然とやっている」仕事なんだなあ…と思います。
(追記)
地震発生より大手検索サイトトップページにあった「熊本地震」への直接検索リンクが、5月4日現在、なくなりました。喉元すぎれば熱さ忘れる…にならぬよう、意識していこうと思いました。