その16 ゲタの鼻緒の直しかた
「ゲタ」を使っている人、いらっしゃいますか?
現代、日常的にゲタを履いているのは、板前さんとお相撲さんくらいでしょうか。一般人でもまれに見かけますが、「一度も履いたことがない」方が多数かと思われますね。
ほんの数十年前(昭和40年代)までは、ゲタはかなりメジャーな履物だったといいます。「ゲタにジーンズ」という現代からするとかなり奇抜なファッション(?)がフォークシンガーなどを中心に流行したこともあるようです。少し古めのマンガでは、貧乏学生は大抵そのスタイルですね。
かくいう私もゲタの愛用者です。あれは木でできていますので、ゴムやビニールのサンダルに比べて吸湿性、通気性がいい。涼しいし足のかぶれや水虫予防にもなる。特に夏に威力を発揮します。おチビな私には、少し背が高くなるのも魅力ですw。
足の親指と人差し指の間に挟まる布の部分を、「ゲタの鼻緒」といいますね。「鼻緒が切れちまった」なんて、もう時代劇でしか聞かないセリフですが・・・実際、あれは切れやすいものです。私も散歩中に鼻緒が切れ、手元に適当な布切れもなく、困った経験があります。
十年ほど前、東京文京区の根津神社で鼻緒の切れたゲタを抱えて往生していたところ、「おう、切れちまったか?」と一人の老紳士が声をかけてくれました。そしてものの3分で応急処置してくれたのです。あまりに鮮やかだったため、強烈に覚えております。
そのときつくづく思ったのは、「昔のモノは昔の人がよく知っている」ということです(笑)。そんなの当たり前じゃないかといわれそうですが、いかにもその通り、当たり前すぎてむこうがビックリしていました。「そうかあ、今は鼻緒の直しかた、知らないんだなあ・・・」と。
70年、80年と生きている人たちは相応の量の知識を持っていて、かつそれを「当たり前」だと思っているようです。生活様式がめまぐるしく変わる現代、表面的にスポイルされているだけで聞くとポロポロ面白い話が出てくる。そんな時お年寄りは大抵、「え、そんなの当たり前でしょ?」という顔をされています。面白いなあと思うのはそんな時です(笑)。
少なくとも私は、「モノを固定する時は、隙間に何かを詰める」という方法を覚えました。介護施設でも家具の固定などに応用し、実際役に立った知識です。こういうのって、なぜか忘れませんね・・・。
(追記)
それにしてもゲタの有効性は見直されていいのではないかと思っております。この蒸し暑い日本で、夏に革靴履くのは不健康ですよ(苦笑)。せめて仕事が終わったら、ゲタに履き替えてみてはいかがでしょう?
駆け込み乗車もなくなると思いますよ(ゲタで走るのは至難の業ですから・・・)。