その140 夢を与える、はいいんですが…
これを書いているのは9月の半ばです。パラリンピック関係の話題が耳に入ってきて、気になったことを記しておこうと思います。
2021年パラリンピックで日本は金13個を含む51ものメダルを獲得し、今まで知られていなかったスポーツにもにわかに注目が集まっているようですね。筆者も5人制サッカー(通称:ブラインドサッカー)が好きになってしまいましたw。
さて大いに明るいニュースなのですが。こういう障害者スポーツのお話となると、筆者はどうしても思い出してしまう介護施設でのある日の一コマがあります。
それは2013年の5月。筆者は当社(㈱エンゼルヘルプ)のグループホームで働いていましたが、テレビからこんなニュースが流れてきました。
「世界最高齢!80歳でエベレスト登頂、三浦雄一郎さん」
施設ではあまりテレビをつけっぱなしにすることはないのですがwさすがにすごいニュースなのでしばらく皆さん、テレビ画面に見入っていました。ちなみに三浦雄一郎さんは登山家、プロスキーヤーとして若いころから有名な方で、利用者さんも「知ってる、知ってる!」と仰っておりました。高齢者の皆さんになじみが深いスポーツ選手…というか、冒険家です。ただそのニュースの最後、キャスターさんが言ったヒトコトが。
「高齢者の星、ですね!お年寄りも頑張って!」
…これには、ある利用者Aさんが苦笑いをされたのを筆者はハッキリ覚えております(;^_^。
いえ、いいニュースに水を差すつもりはないのですが。ただ正直言って、「世界のミウラユウイチロウ」と「高齢者」とひとくくりにするのはあまりにも雑すぎます(苦笑)。三浦氏の如くは超人ともいうべきお人で、「だからお年寄りも」は論理が飛躍しすぎです(-_-;)。
もちろん高齢者ご本人が「自分も三浦さんみたいに頑張ろう」というのは大いに結構ですし、介護職員なら支援したいですが。むしろそんな燃えている人には「最初はあまり無理せず…」と声をかけるのが仕事でしょうw。
どうもパラリンピックにも「そういう空気」があるようで。知り合いの理学療法士の方の話によると、障害リハビリの現場で「パラ」を引き合いに出す職員さんがいて困るそうです。パラ観戦・感動の余熱か、つい口に出てしまうのでしょう。…ただリハビリとスポーツ、しかも世界レベルは全くの別物。なんで障害者だからってトップアスリートと比べて云々言われなきゃならんのか、と言われたほうは思うでしょうね…。
自分だって、いま他人から「ゴロゴロしてないで大谷翔平選手みたいにメジャーでホームランをパカスカ打ってきたらどうだ」と言われたら「あの大谷選手と自分と何の関係が…(-“-)」と思いますが(笑)。(まったくの余談ですが、筆者は松坂大輔選手と同い年のため、夏休みゴロゴロしていると母親に「松坂クンはあんなに頑張ってるのに」とイヤミを言われたものですw介護現場だけの話じゃないですね(;^_^)
悪気がないのは重々わかるのですが。極端な例を引き合いにして「だから頑張って」というのは、言う方は気軽でも言われるほうは不愉快じゃないかと思います。少なくともそういう気づかいはあっていいのではないかと…。
そのうえそれを我田引水というか、牽強付会というか、「障害者」「高齢者」をひとくくりに、あわよくば運動の機会づくりに「利用」しようとするのは、はなはだ失礼な話…だと思います。
ニュースにもなった車いす少年のツイート「ぼくは教材じゃない」の通りですねm(__)m
(追記)
パラリンピック選手の、新しい呼び方はないものでしょうか(._.)
…もっと一般的になったら、呼び方が変わるんじゃないかな?と期待しています。