その67 ヒダル神に憑かれたら
山道などを歩いていると、急に猛烈な空腹感や倦怠感に襲われ、発汗・痙攣、ひどいときはその場に倒れて死に至る・・・これを古来「ヒダル神が憑く」といい恐れられた民間伝承です。昔の行商人や旅の僧侶は特にこれを警戒し、お守りとして梅干、昆布、焼味噌を携帯したといわれます。「ダルに憑かれた」時、それらを口にすると難を免れるそうで、ない時はなんでもいいから食べ物、または手のひらに「米」の字を書くといいます。
民俗学者の柳田国男氏が紹介し、漫画家で妖怪研究家の水木しげるさんが「実際に出会った」とエッセイなどに書いている有名なお話です。
ここは民俗学や妖怪研究の場ではないのでw、介護職員として考えてみると・・・どうもこれは「脱水(電解質異常)」や「低血糖」じゃないかな?と思われます。
山道や旅で疲れれば、急な脱水や低血糖を起こしますね。そのとき梅や昆布・味噌で塩分ミネラル、お米で糖分を補給したのでしょう。
栄養の細かい知識がない時代、これを怪異のわざと見たのでしょうか。しかし「お守り」の成分がピタリとハマっているのには迷信以上の知恵を感じます。
などとカガクテキに考えていた私ですが、8月某日、ヒダル神に「憑かれ」かけました(苦笑)。
暑いので普段のジョギングは止めて、20年ぶりにプールに行ったところ、上がってしばらくしたら急な動悸・吐き気・発汗に襲われました。まったく急な変化で、それこそ「妖怪に憑かれた」感じです。1分前まで「走るより泳ぐほうが涼しくていいや」などと思い、実際身体もラクに感じていたのですが・・・。
まちがいなく脱水だと感じた私は、すぐ目の前の中華屋さんに飛び込み、テーブルのお塩とお酢をお冷に混ぜて飲んだところ、難を逃れました。この回復もまた急激で「憑き物が落ちた」とはまさにこのことです。
毎年このコーナーで「脱水注意」を歌い、運動時は特に注意していたつもりでしたが、お恥ずかしい限りです。
事故検証としては、
・ジョギングを水泳に急に変えた
・水泳中は涼しいからと言って、水分・塩分の補給を怠った
などが上がるでしょう。
しかし最大の敗因はなにより「お守り」を持っていなかったことです・・・。
走るときや外出時は必ず持っていくペットボトルと「カリカリ梅」をこの日に限って忘れました。急に新しいことを始めようとして、意識からこぼれたためです。
「注意している」という曖昧な意識ではダメで、「お守りは常に持って」いなければ意味がないんですね・・・w。
なので今年から「脱水に注意しましょう」という言い方は、ヤメにします。
皆さん、「外出時には必ず水筒とアメ玉と梅干を持ちましょう」。これなら間違いない。
私は今、普段のバッグの右ポケットに「お守り」を仕込んでいますw。
(追記)
以前も紹介しましたが、どうも「梅」と「味噌」は昔からエライようです。栄養以上に「これがあれば一応安心」といったような・・・その「魔よけ」力は21世紀も現役ですね。