その157 ブリストルスケール

「人間は 食て寝て起きて糞垂れて 子は親となる 子は親となる」

と唄ったのはかの有名な一休さんです。ちょっとキタナイwようですが、食事・睡眠・排せつ。そして繁殖に子育て。人間だけでなく、生き物はだいたいこのようなサイクルを持っておりますね。

さて先日、会社からイラストの依頼を受けました。ずばり申しますと、「ウンコ」を描いてくれというお話です。

介護では利用者さんの健康状態把握のため、便通についても記録を残す必要があります。毎日しっかり出ているか、便秘気味ではないか、お腹を下してはいないか。お医者さんとも連携する、とても重要な記録です。

ただこの記録がけっこう難しい(-“-)。

言葉で書くと、人によって表現がさまざま、曖昧なのです。「しっかり便通があった」といって、どれくらいなのか。「お椀一杯ほど」って、どのお椀か。「硬い」といってどれくらいの硬さなのか。結局「バナナ一本」などという比喩表現になったり…(バナナだっていろんな大きさがありますからねw)。

これはどうしてかと考えてみますと。なんとなれば、人間、人前であまりそういう話はしないことになっている…からでしょうか。言語の共通性が育っていない気がします。
最初の詩でいえば「食て」「寝て」の話題は日常会話にもあふれております。「子は親となる」恋愛ドラマ、映画、育児エッセイ、いつの時代も花盛りです。
しかるに「糞垂れて」はいかがでしょう?

…いえ当方もいくら介護職員だからといって、声高に話せというつもりはありませんが。トイレは「はばかり」ともいいますしね。ことはすべて密室で行われる以上、話し合う機会が少ないのも当然です。…ただやっぱり少しは「いい便」について知り、認識を共有する必要がある。これは介護職員のみならず、自身の健康管理にとっても重要なことだと思います。

そこでいい便、悪い便の状態をイラストに描き、記録ではそれを使おうということで、冒頭の依頼と相成ったわけです。

イラストは「ブリストルスケール」と言われる、便の状態を段階的に分類した図を参考にしました。
(※そういう図があるなら、わざわざ描かずにそれを使えばいいじゃないか…と思われそうですが。著作権や使用権の問題で、会社で使う場合には独自に描く必要が出てくるのです。)

…と、ここまで描いたところで、さらに追加注文が付きました。

「便に、目と口で表情をつけてほしい」

…さすがに筆者も、「それは漫画『Drスランプ』のアレみたいなことですか?」と聞き返してしまいましたが(笑)…つけてみました(._.)。

なるほど、こうしてみると確かに一目で「これが良い状態の便」とわかりますね。表情もつけてみるものです(笑)。

さて真面目な話、便に関して「これがいい状態」としっかり教わったことがあるでしょうか?…学校はもちろん、親からすら教わった覚えがありません。お医者さんも食事や運動の指導はしますが、便は「検査」くらいであまり話題にされません。

量や回数、硬さ、水分量…ほとんどの場合「自分のもの」しか知らないわけですから、たとえばいつも下し気味の人、便秘気味の人ではいい便の基準が違うでしょう。記録が難しくなるのもわかる気がします。具体的に「絵にしてみる」ことには、こういう問題を洗い出す機能もあるのですね…。色々考えさせられます。

私事ですが、20年近くマンガを商売にしてきて「ウンコ」を真面目に描いたのは初めてです(^^;)。