その239 身近にある「介護食品」のマーク
ユニバーサルデザイン、という言葉を聞いたことがおありでしょうか?
近年、気を付けていると時折目にする言葉です。

ごく簡単に定義を言うと「国籍や文化が違っても、年齢や性別や身体の障害があるなしに関わらず、みんなが使いやすいようにデザインされた」ものということだそうです。主に道路や施設建物について目にすることが多いですね。
年齢、体力、病気や障害のあるなしという点からすると介護にも大いに関係しますので、目に付いたときは注視しておりました。
具体的には階段ではなく坂道になっている病院の入り口とか、ドアのレールが平らになっていてつまづかないようになっている飲食店の入口など。いわゆるバリアフリー設計のもの。こういうのを見ると(このお店は介護の必要な人と一緒に来ても楽しいだろうな…)などと想像します。
そうした場所だとトイレも気になります。広い、手すりのついた、できれば車イスで入れる多目的トイレがあったら嬉しいですがこれもまさにユニバーサルデザインですね。
駅などはこうした工夫の宝庫で階段の手すりが二重になっていたり、車いすごと乗れるエレベーターがあったり、切符売り場も券売機の高さが一段低いものがあったり、改札も車いすのまま通れるような広いものがあったりします。
どうも職業病と言いましょうか、いまだにそうしたものを見ると(車いすの人と一緒に行動する場合、まずあのエレベーターを使って、切符はこの台で買って、改札は一番右を…)などと脳内シミュレートしてしまいますw。
さて、こうした介護にも関係する工夫が街で見られるのは頼もしいことですが。先日、意外なところでこの「ユニバーサルデザイン」の文字を見つけました。
それは、なにげなくスーパーで買ってきた…パンです。
個人的にふだんあまりパンを食べないのですが、今年はお米高騰の折にて、例年より麺類やパンが増えております。普通の食パンも少々飽きてきたのでちょっと気分を変えて、いつもは買わない種類のものを買ってみました。
具体的に商品名を出させていただくとヤマザキパンさんの「ダブルソフト」です。あの山切りカットの、ふわふわのパンですね。
そのパッケージに「ユニバーサルデザインフード」と書いてありました。なにやら専用のマークもついております。
…どうも食べ物にも「ユニバーサルデザイン」が入り込んでいるようですね!
調べてみたところこのマークは「日本介護食品協議会」が認定した「日常の食事から介護職にまで幅広く利用できる、食べやすさに配慮した食品」につけられているようです。
日本介護食品協議会のホームページによると2025年10月現在で97の会社が加盟しているようで、前述の「ダブルソフト」を出しておられる山崎製パン株式会社のお名前もそこに見ることができました。
(参考・日本介護食品協議会のホームページ https://www.udf.jp/index.html)
(参考2・厚生労働省による「ユニバーサルデザインフードの上手な選び方」PDFのページ https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0129-3i.pdf)
詳しくはホームページを見ていただきたいのですが、食べやすさといっても漫然と決定されているのではもちろんなく、食べ物の硬さを科学的な基準と機械による正確な測定で求め、共通の4段階の区分で管理されておりました。
筆者の買ったダブルソフトは区分「容易にかめる」で、区分1に相当。
ほか柔らかくなるごとに区分2「歯ぐきでつぶる」3「舌でつぶせる」4「かまなくてよい」などがあるようです。
また加盟企業のお名前を見てみると面白くて、スーパーで見ない日はないような有名企業がずらりと並んでおります。
一例ですが味の素、カゴメ、亀田製菓、キッコーマン、キューピー、日清オイリオ、マルハニチロ、明治、吉野家、丸美屋(敬称略)…などなどです。こうなると気づかないだけで毎日「ユニバーサルデザインフード」の前を素通りしているのかもしれませんね。

お煎餅で有名な企業も含まれていますが。いったいどんな食べものがユニバーサルデザインフードになっているのか探してみるのも一興だと思います。意外に「おかゆ」を作っていたりして、ああそうかお煎餅もお米か…と妙に納得してしまいました(笑)。
筆者は管理栄養士さんや調理師さんと一緒に介護食の研修を取材したことがありますが、専門のものだけでなく、一般の食品として流通しているものにもそうした考え方が浸透しているのだなと時代の流れを感じた次第でありました。
以降も、ちょっと気にして探してみたいと思います。