その08 失ってわかる・・・
この4月から、電力の自由化がはじまりましたね。自由化の流れについては「けあサポ」のコラムに書きましたので重複は避けます、よかったらそちらも合わせてお読みください。
東日本大震災での大規模電力不足を受けはじまった電力自由化。「電気がこない!大変だ!」普段ふつうに使っているものの重要さを、失って初めてわかる典型例でした。
介護職としてお年寄りに関わると、思ったとおり体が動かないというのはどういう気持ちだろうとイヤでも考えざるを得ません。
先日ある先輩から『人生初の骨折を体験した』旨のメールがきました。『いろいろ見えてきます』と結んでありましたが、わかるような気がします。健康や体力も「失ってわかる」ものですよね。
私の友人で漫画家でもあるK氏は、昔「アニメーター」をしていました。アニメーションの動画を作る仕事です。これは世にも厳しい職業で、描いても描いても儲かりません。なにしろ1秒につき8~12枚もの絵が必要であり、単価は驚くほど安い。一日中座って絵を描いていた彼は20代にして痔を患いました。
「日本は座れない人に冷たい」とはその頃の彼の言です。飲食店では立って食べる席がない。映画館で立ち見するなら一番後ろに行くしかない。自転車、バイクはもちろん自動車にも乗れない、バスでは運転手さんに空いてる席に座ってくださいと言われる。
「座れるのは当たり前ではない」これも失わないと気がつかないことでしょう。
かく言う私も坐骨神経痛を患ったことがあり、一週間ほど左足をひきずって歩きました。長い横断歩道や踏切が恐ろしく、「日本は走れない人に冷たい」と感じました。元登山部、足には自信があったのでショックをうけたものです…。
かような体験から「失ってわかっても遅い」と考え、失わないように、また失われたらどうするかを考えるのが知恵というものでしょう。電力も介護も他人事ではありませんね。
ちなみに自室の照明が故障しまして、今現在、卓上灯を頼りにこの文章を書いています。私だけ電力の不自由化になってしまいました。電灯ってめったに故障しないので、ないとこんなに不便なのかと驚いています。マンションは昼でもこんなに暗いのかと…(苦笑)。