その196 自宅の中で、もっとも危険な場所は?

 結論から申し上げますと、それは「お風呂」だそうです。
事故が多発するのは特に冬場、そして高齢者。お読みの皆様はお風呂の安全対策、どうなさっておられるでしょうか?
 寒さ疲れもたまっている2月、お風呂でしっかり暖まるのは健康、睡眠、リラックスに保温保湿で感染症対策と大変重要なことのですが、これが危険だというのはなんとも悩みどころですねえ…。

 厚生労働省人口動態統計(令和3年)によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,750人で、交通事故死亡者数2,150人のおよそ2倍だそうです。(政府広報オンラインより引用)

 お風呂が危ないのは介護職員としても重々実感がありますが、死亡者数が交通事故のなんと「2倍」とは驚きです。外出より危険なのですね!ちなみに室内で次に危険なのは「階段」ですが、事故数はともかく死亡者数はお風呂のほうが圧倒的に多くなっています。これにはいくつか、お風呂に特有の要因があるようです。

 ひとつにはまず「溺死、溺水」があること。
 当然ですがお風呂はお湯が張ってあり、体の不自由な方が浴槽に落ち込めば窒息の危険がありますね。ちなみに「溺水」とは水中で窒息状態になること、「溺死」とはそれが原因で死亡することを指す言葉で、あまり耳慣れませんがお風呂の事故では頻出するキーワードです。

 つぎに最近よく言われる「ヒートショック」です。急激な温度変化による血圧の急上昇。暖かい居室から、寒い脱衣所へ。そしてまた熱い湯船へと…。血圧は乱高下し、脳に血液が回らないために意識障害が現れます。実は最近まだ40代の筆者もこの温度差はキビシイなあと肌で感じており、冬のお風呂は気合をいれないと入れません…(^^;)。

 みっつにはお風呂ではたいてい「ひとり」になること。何かあってもすぐには気づいてもらえず、また「溺水」状態では声も出せません。介護施設では一人でお風呂に入れる人にも職員がたまに声掛けに行きますが、自宅ではなかなかそうもいかないでしょうね…。

 介護施設の話が出たついでですが、筆者が勤めたグループホームでのお風呂の支援も考えてみるとかなり手厚いものだなあと思います。

 一人で入浴できない方につきっきりで支援するのはもちろんですが。ほとんど何の問題もない方でも、職員は相当気を張っております。

 まず入浴前。当然ですが医師に入浴を止められている人は入れません。しっかり確認です。時間も食後すぐなどはNG。基本ですね。

 お風呂や脱衣所に危険物が落ちていないか、洗剤や漂白剤などが出しっぱなしになっていないかを確かめます。
 脱衣所の温度は適切か、足元は濡れていないか、滑りそうな場所はないか。もちろん湯船、湯温、シャワーの湯温も確認。

 入浴中は(おせっかいとは思いながらも(^^;)…)ドアの外から声を掛けます。「お湯加減いかがですか?」なんて冗談ぽくいいますが、もし返事が無かったら無礼にもドアを開けて確認せねばなりません。
 また着替えはちゃんと用意されているか、も大切です。上がったあとでアレがないコレがないとなると、共同生活の場で、半裸で部屋にとりにいくなんてできませんし。

 無事お風呂が終わり、着替えも出来たら、最後はドライヤー。しっかり髪を乾かしていただく。そのために冬は暖かい洗面台の前を確保しておいたり、夏はすずしい玄関ポーチに椅子を出しておいたり…。こう思い出すといろいろやっていたものだなあwと思います。
 (おかげさまで筆者が勤めた3年間ではお風呂での事故は見ずに済みました)

 上に縷々書いた介護施設の支援は、冬場のお風呂事故予防の心得にも合致しておりますね。

1,入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
2,湯温は41度以下、お湯につかる時間は10分までを目安にする
3,浴槽から急に立ち上がらない
4,食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける
5,お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける
6,家族は入浴中の高齢者の動向に注意する
(政府広報オンラインより引用)

 しかしよく考えると、自分のお風呂に関してここまでの準備は全くしていないですね(^^;)ワタシは…。

 「お風呂が沸きました」と給湯器が言えば、信用してそのまま入ってしまいますw。結果ぬるかったり熱かったり。

 脱衣所も寒いまま、さっさと脱いでエイっと入ってしまうw…そして湯船で頭が痺れる。急いだもので洗濯機の中で靴下がひっくり返っていたり。

 着替えもだいたい下着とズボンさえあればいいかで、上がったあと上着や靴下がなく寒い思いをします。
 なので脱衣所・洗面所でゆっくりできずドライヤーもかけない…タオルでゴシゴシの洗いざらしです。

 …なんだかこのように書き出してみて、自分が「冬のお風呂が厳しくなってきた」のは当たり前か(^^;)と思えてきましたね…。

 というわけで、自宅で余っていたコレを

 脱衣所に置くことにしました。
 多少電気代はかかりますが、脱衣所にいる時間はそう長くはありませんし。交通事故以上の危険率を避けるためなら惜しくはないかと。

 …当然ですが、だいぶ…いや、非常に楽になりまして。家人に「なんでもっと早く気づかないの」と怒られました次第です(-“-)。

 しかしまあ、何か起きる前に具体的に対策がとれたのは、自分で自分に及第点をあげたいと思います。