その32 「そんなの常識よ?」
知っている人には「常識」でも、知らない人は知りません。
介護の現場にいるとき、何度か先輩に「そんなの常識よ?」と言われました。介護技術とか法律とか、そういうことではありません。文字通り「常識」についてです。どんな人でも意外なところが抜けているもので、しかも本人はそこに気がついてない場合がほとんどですねw。
恥を忍んで申しますが、私は32歳で介護職員になるまで「柔軟剤」の使い方を知りませんでした。
先輩が洗濯機に洗剤のほかに何かを入れている。「それなんですか」と聞くと不思議そうに「え、柔軟剤だけど」。「柔軟剤ってなんですか」と重ねて問うと先輩は心底呆れた顔をなさいました。「そんなの常識でしょう」と…。
18歳から独り暮らしで、14年も自分で洗濯していたのに我ながら恥ずかしいことです。
またある職員さんは介護の学校を卒業され、介護技術も医療知識もしっかりした頼りになる人でしたが、「肉じゃが」の作り方を知りませんでした。彼女がはじめて作った肉じゃがは客観的に見て「けんちん汁」であり、さすがに煮汁の量を説明したところ「へえ、よく知ってるね!習ったの?」とのこと。「それは、常識ですよ」とつい答えてしまいました。
その他掃除の仕方、洗濯物の干し方たたみ方、食器の洗い方、話し方電話の取り方…数多くの「常識」を教わったり教えたりして、皆だんだんと常識人に近づいていった…そんな気がします。
ことほど左様に、どんな常識でもはじめは新知識。介護職員としてというより、一人の大人として、自分の「非常識さ」に気がつく機会を得たのは大変貴重なことだったと思います。私も今では柔軟剤漂白剤、ドライクリーニングまでマスターし、前述の職員さんもすっかり煮物上手になられました。とはいえ、まだまだ知らない常識がたくさんあるでしょうね。それもまた自然なことと思えます。
こういった常識的知識はもちろん学校では教わりません。会社でも、ふつう「柔軟剤の使い方」なんて教わらないでしょう。では家で両親に教わるかといえば…あまり、そういう機会もないようで。現代は特に…。
小さな目立たないようなことですが、職場だけでなく生きるうえで毎日使っている常識。これを教われるのは、介護の仕事の面白い副産物だと思います。
(追記)
冒頭マンガの続き。太いマジックをよく使う人には常識ですが、意外と知らない人もあるようで…。役に立ちますよw。