その60 外出支援は登山に似ている
6月、この梅雨が明けたら本格的に行楽シーズン到来ですね。海か山か、街の観光地か、外出の増える季節です。
のっけから水を差すようですが、行楽シーズンは同時に「遭難シーズン」。今年3月・三頭山遭難が記憶に新しいですが、レジャーの事故・遭難は冬に限りません。5~8月も要注意期間。遭難者の半数以上が50代以上の中高年だと言われます。
(山を例にとると、事故発生件数が一番多い時間帯は午後3時過ぎ…通称「シャリバテ」お腹がすいて事故るんですね。いえ冗談じゃありません、ホントです。オヤツは必ず携行しましょう)
…ところでこの時期、介護職員さんが利用者さんと連れ立って外出している姿を見ると、私はつくづく「エライなあ」と感じます。普通に買い物しているようで、頭の中はあらゆるリスクにフル回転しているにちがいありません。優雅に見えて水面下では全力バタ足…の白鳥のようです。
私がグループホームにいた時分もっとも緊張したのが、薬の支援と買い物でした。拙著『ボクは介護職員一年生』(宝島社)にも描きましたが、買い物支援はあらゆる意味で「登山」に似ています。
一緒に行く人の体力と体調。
天候、温度の時間変化。
道の安全性。
ペースと適切な休憩(に伴う行動食の用意)。
長時間の外出には万一の着替えまで。
その他エトセトラエトセトラ…。
先輩職員さんは「道のちょっとしたくぼみ」「地面に書いてある文字のペンキの厚み」まで頭に入れておりました。天気が怪しいときなど「今日は荒れる、〇〇マーケットまでは危険だ」と眉をひそめていう表情はまさにベテラン山岳ガイドそのものですw。
そしてその上でもなにかの拍子で、予測不能な事故はどうしてもあるもの。
毎日平気な顔をして買い物、外出支援をする職員さんを、私は尊敬します。
そして「無事に帰ってこれた」達成感もまた、登山と通ずるものでしょうw。
…先々月。山の経験が全くない家人が「山に連れて行け」と言いました。
以上のような考えを常に持っている私が選んだコースは、埼玉県飯能市「日和田山~物見山」です。この山を知る方なら、いかに私が「ビビっていた」かがすでにお分かりだと思いますw。
無事帰宅したとき、私は「グループホームに勤めて初めて独りでやった買い物支援が終わったときの気持ち」をありありと思い出していました。
(追記)
スマートフォンに標準装備されていながら、普段あまり意識しない機能に「電子コンパス」と「GPS」がありますね。実はこの2つ、ネット環境がなくても動きます(ご存知でしたでしょうか?)。アプリのマップ機能が使えない電波のない場所でも、あらかじめ地図をダウンロードしておけば、GPSの位置情報と電子コンパスで現在地と進路を把握することができます(「GPSアプリ」で検索すると便利なものがたくさん出てきますよ)。街中でも、データ通信なしで地図が使えて便利です。
特に電波の弱い自然行楽の際、知っておくと安全な基本ワザです。