その184 「花瓶」のない生活…でした

私事でスミマセンが先月、ご近所の方からお花をもらいました。

 別にお祝い事があったわけではないのですが。
 ある日ふと見ると道の向こうから花束が「歩いて」きます。それは両手いっぱいにお花(主にアジサイ)をもって顔が見えなくなっているお隣さんで、聞けば知り合いの庭に咲いたアジサイがあまりにも見事だったためもらい受けて来たそうです。
 
 「おすそわけ」と言って当家にもアジサイを4,5本いただきました。(白いのはキレイだからあげないwと言われましたが…(笑))

 さて持って帰って気づいたのですが、筆者の家には「花瓶」がありません。…そういえば、実家を出てからこのかた、筆者は自分の家に花瓶を置いたことが一度もない。買ったこともないことにその時初めて気が付きました。

 筆者が勤めたグループホームや、見学に行った当社の別の施設でも、そういえばお花はいつもあったなあと思い出します。お花が好きな利用者さんは特に女性に多いですし、男性でも高齢者の方は実によくお花の名前を知っておられますね。別段、お花好きでなくても知っておられる。一般常識だったのでしょう。…今の若い人はあまりお花の名前を知らない人が多いと思われますが…。

 花瓶にお花を飾るというのは、施設では実はけっこう手間なものです。

 まず買ってこなければなりませんが、忙しい仕事の中、お花屋さんに行く機会は意識しないと作れません。買い物ついでに寄ろうとしたら荷物がいっぱいで持てなかったりw(職員は不測の事態に備えて常に両手を空けておかねばなりませんが、お花をリュックに詰め込むわけにはいきませんからね)。
 また花瓶に生けたら毎日水を替えなければなりません。古くなってきたら、見栄えの良いようにしおれた葉っぱを落としたり、茎の尻尾を切りなおしたりしますよね。その時ハサミを出しっぱなしになんかしたらまたひと悶着…w。
 その上、これは介護施設特有の手間かもしれませんが、「事故がないように安全な場所にしょっちゅう移し替えなければならない」のですね(;^_^A…。
 たとえばリビングのテーブルに置いていた場合、食事中は食べ物に混入しないようカラーボックスの上にどかしたりします。その後、食事が終わってトイレに行く方があるとして。歩行がやや不安定でいつもそのカラーボックスに手をついて歩くなんて場合がありますね。職員はそのタイミングの前に、さりげなく食事が終りかけたテーブルに花瓶を戻したりしているのです(笑)。
 
 先輩職員さんの「花瓶動かしムーブ」があまりにも自然で、筆者ははじめのころ職員が事故予防に花瓶を動かしていることに全く気付かなかったほどです(笑)。

 …そんなに危ないなら、花瓶なんか置かなければいいじゃないか?と思うかもしれません(筆者、最初は正直そう思いました(;^_^A)。が、なかなか自由に外出する体力がない、特に施設に入居されているような方々にとって、生きている季節の花を愛でる、匂いを嗅ぐ、触ってみるというのは若く健康な人には想像もつかない楽しみだったに違いありません。自然や季節を実感するのは有効なリハビリでもあります。
 …つまり花瓶の危険対応は「業務」なわけですね…。

 実際、筆者も入居者さんに教わったお花がいっぱいあります。Aさんの大好きだった「リンドウ」、その時初めて名前を知りました。また「蘭の鉢植え」は高価なもので、いただいたら長持ちさせねばならないwこと。菊はキレイだけどお供えのお花だからあまり贈り物にしないこと。お見舞いにシクラメンを持って行ってはいけない、鉢植えは特にいけない(病気が長引くような気がする)…などなど。お花のこといっぱい教わりました。こういう常識も、そういえばなかなか教えてくれる人がいませんね。

 食事、入浴、トイレが生活の中心になりがちな介護施設において、「花を愛でる」「花の話を聞く」というのは実に貴重な文化的活動だったと思います。安全や生存のためだけにやっきになっていたらかえって生きているハリがありませんからね。花瓶の危険管理が大変でも、十分それ以上の価値があったと今では思います。

 …しかしそんなことを言って、肝心の自宅に花瓶がなかったというのは筆者、不明の至りでした(;^_^A。野草は好きですが(それも入居者さんに教わったことです)見るのは散歩中だけ。どうもまだ「自宅で花を愛でる」という心の余裕・風流の域までは至らなかったようですね…。

 これを機会に、人生初の「花瓶」を買ってきた次第です。今は割れにくい丈夫な花瓶がいろいろあるんですね。飼い猫が倒さないように、自宅でも危険管理していこうと思います。