その171 持ち味を変えないで
先日、ネットニュースで「若者の梅干し離れ」が報じられました。反響も大きく、ツイッターではトレンド入りするほど。目にした方も多いのではないでしょうか。
このコーナーでも何度も「梅干しはエライ!」と書き連ねて来た当方、これは由々しき事態とニュースを追いかけてみました。
(以前ご紹介した梅干しのお話です)
報道は近年梅干しの消費量がどんどん下降し20年で半減した、消費減はことに若者世代に顕著であるというものです。主な理由は「すっぱいのが苦手」「食感が嫌い」など。メーカーは若者世代にアピールすべくはちみつやオリーブオイルを加えたすっぱくない梅干し、またキムチ味など刺激的な辛い梅干しを展開するも、効果ははかばかしくないようです。
面白かったのは、このニュースに対する消費者の反応で、もっとも多かったのが
「余計な工夫をしなくていいから昔ながらのすっぱい梅干しを普通に出してほしい」
でした(^^;)…実は筆者もそう思う一人です。
だってここ10年、市販の梅干し、すっぱさが減っていませんか?
私事で恐縮ですが先日、大根の和え物を作ろうとしたときです。
いくらこの梅干しを加えても、ちっともすっぱくならないのです!…まあ、これはパッケージをよく見ず買った当方が悪いのですが(^^;)、それにしても梅干しを何個も放り込んでもちっとも味が変わらないというのはビジュアル的に衝撃で、自分は心底「梅干しのすっぱさを信頼していた」のだなと痛感しました。
その一番の売りが弱体化しては、やはり買う手が引っ込んでしまうのも道理ではないでしょうか。
改めてスーパーに梅干しを買いに行ったところ「しょっぱくない」「減塩・塩分8%」「はちみつ入り」などの文句がずらっと並んでいました。端っこのほうにようやく余計な文句のない「塩分15%」を見つけて購入しましたが、食べてみてまだ控え目だなあと感じます。
30年ほど前のこと、筆者の実家では毎年梅干しをつけていました。実家の梅干しはいま思い出しても唾がでるような、後頭部がキュッとすぼまるようなしょっぱさ。もちろん余計なものは何も入っていない、白干し(しらぼし・梅と塩だけでつくったもの)です。塩分は20%と言われています。
梅干しをつけるくらいは地方ではまだまだ一般的ですし、小さいころに「すっぱ~い梅干し体験」をした若者は現代でもかなりいるのではないかと思います。
上京・一人暮らしを始めてはじめてスーパーで梅干しを「買った」のですが、ずいぶん味が薄いなと思ったものです。白干しを買おうと思えば専門店か通販を使わねばならず、筆者も大学時代から10年以上あまり梅干しを食べなかった時期があります。若者の梅干し離れとはいいますが、こういう「若者」もいるのではないでしょうかね…。
健康志向の減塩も、若者アピールの味変もわかります。時代によって変化も必要かもしれません。でもそれも本来の持ち味まで変えてしまってはいかがなものかとの消費者の声…いろいろ大変でしょうが、メーカーさんにはぜひご一考いただきたいとイチ梅干しファンは思います。これは梅干しに限らず、仕事には「変わらないこと」も大事なのかもしれません。
「梅はその日の難逃れ」といいながら、毎朝一粒召し上がっていた利用者さんの顔が思い出されます。
筆者も毎朝欠かしません(‘ω’)。