その90 SNAKY MONKEY
先日、本社所属の理学療法士・田中義行さんとお話する機会がありました。理学療法士とはザックリ言ってリハビリの先生のことです。
介護では高齢者、特にマヒや障害をもった方のケアも行います。その際「体の仕組み」や「マヒの原因になる病気」を知ることが重要。田中氏は主にその研修・実践をしている人です。
話の中で「虫様筋握り」が出てきました。
これは介護者が相手の体に触れる際、ケガをさせないようにする「手の形」を表した言葉です。では具体的にどういう形なのか?
・・・これが見れば簡単なのですが、言葉にすると非常にややこしいものです。
だいたい、まず読めないんですねw。「ムシザマスジニギリ」と読んだ人がいるそうです(実話)が、「ちゅうようきんにぎり」です。
虫様筋とは?専門書には以下のような解説が出ています。
『第2~第5指のMP関節の屈曲とDIP・PIP関節の伸展に作用している筋肉』・・・いくら正確を旨とする専門書とはいえ、これで解る人はまずいないでしょう。
昨今は本にもネットにもイラスト・写真がついており何とかわかりますが、それにしてもこの文章は難解すぎる(^^;)。言葉だけで理解しようと思ったら、オランダ語と格闘した新井白石のような苦労を強いられてしまいます。
私は医者でも学者でもないので不正確なたとえを使ってしまいますとw虫様筋握りとはジャッキー・チェン主演のカンフー映画「蛇拳」の手です。念の為イラストを付記します。
・・・あ、見たことある!という人、多いのではないでしょうか?少なくとも『MP関節の屈曲云々』よりはマシでしょう。
この手のひらの部分で相手の「骨の出っ張ったところ」(肘、肩、腰骨など)を軽く押さえる。これが痛くない触れ方です。
イラストで手の平に玉子を掴んでいますが、負荷をかけずにキープするのがポイントです。
逆に柔らかい部分に指先を立ててグッと掴んでしまうと、皮膚の損傷、アザの原因になってしまいます。
・・・驚いたことに、映画「蛇拳」の敵役がそういう拳法を使ってくるんですねw。ひっかくような手の形で、腕・胸・わき腹など筋肉の柔らかい部分を狙うのです。これは痛い。見ているだけで痛いです。ゼッタイにやらないで下さい。
ちなみにこの敵役の拳法を「鷹爪拳(ようそうけん)」といいます。
介護では禁じ手の邪法と言えましょう。
(追記)
表題「SNAKY MONKEY」は「蛇拳」の英語タイトル。虫様筋握りを外国の人に説明する機会があったら言ってみましょうw。世界的ヒット作のこと、意外に伝わるかもしれません。