その175 道具と安全性・未来と過去

交通事故の件数・被害者数は近年とみに減少しているそうで嬉しい限りですが。

自動車のブレーキとアクセルを間違えて…と聞くと「あ、またか」と思ってしまいます。このタイプの自動車事故は75歳以上の高齢者に集中しているというデータが明らかになってきました。その割合は60歳以下のドライバーに比べて3倍以上となっております。

(若い人でも当然踏み間違いはあるのですが、高齢者はその後のパニック状態が長引いて2回、3回と衝突を起こしてしまうという研究結果も出ております。)

年をとればうっかりマチガイや視力、反応速度の低下が進みますので事故率が上がるのもわかります。しかし大変なのは被害者のほうですよね。自分がしっかり交通ルールを守っていても全く関係がないのですから。加害者に直接的な悪意も害意もない以上、どうやって被害を予見したらいいのか…大変難しい問題です。

3月に報道されたブレーキ・アクセル踏み間違い事故の裁判では、加害者の男性は「免許を返納するとどこにもいけなくなってしまう」と供述しておりました。…これも正直、そうだろうなと思います。バスや電車の少ない地域、坂、雪の多い地域は日本中にいくらでもあり、またバスだって玄関先まで荷物を持ってきてくれるわけではありません。10キロのお米をもってバス停から歩くのは高齢者には難しいでしょう。といって毎回タクシーを使うわけにもいかない。お金がかかりすぎます。
こういった地域では「危険だと分かっていても自動車を使わざるを得ない人」もいるのだと思います。…といって、それで事故を起こしていいのかといえばもちろん全くいけませんが…。こちらも大変難しい問題です。ただ、単純に「高齢者は免許を返納すべし」といっても済まない問題であることは明らかでしょうね。

そんな中ひとつ期待されるのは自動車の「誤作動防止システムの進化」です。

自動車の運転もオート操作がだいぶ進み、先日のコラムで登場してもらったタナベさんは購入した新車の「自動で車間距離を調整する」「ハンドルを手放しても走行レーンをキープする」などの機能に興奮(笑)しておりました。誤作動による無茶な急発進を押さえる機能(S-DRIVE 誤発進防止システムなど。一般車両に後付けできるもの)も開発が進んでいるそうです。ぜひ普及に期待したいところですね!

…こうした専門分野は介護職員の領分を大きく超えていますが、前述別のコラムでご紹介した介護車両にせよ、今の世の中どんな仕事にも介護的な視点が入り込んでくるのだなあと実感します。

これからますます進む高齢化のなか、こうした視点や工夫は自動車以外にも広がっていくのでしょう。介護経験者(プロ・自宅介護問わず)の意見も反映された、安全な道具の進化は必須ですね。

(少し長い余談)

先日、地元の骨董市で少しむかしの刃物(出刃包丁と裁ちばさみ)を買いました。お店の人は、錆びの手入れは必要だが切れ味は今のステンレスやセラミックの包丁よりむかしの「鉄」のほうがずっと優れている、と教えてくれました。

自宅で魚をさばいてみて(さばくなんて大げさに言ってスミマセンw、3枚におろしただけですが)これは確かに全然違う、切れ味がいいので動かした方向にほぼ抵抗なく動くのですね。余計な力が要らない分、手が滑ったりしません。
なるほどよく言われる「切れる包丁のほうがかえって安全」を実感します。

裁ちばさみも、シャリンシャリンと小気味のいい切断音。こちらも切れ味よく作業が楽です。安全です。

たしかに鉄の刃物は見た目が「ごっつい」し重みもあるし、子供が使うには危険かもしれません。が、慣れてしまうと切れない材質のものよりずっと安全な気がします。

そういえば筆者が勤めたグループホームにも、はさみを使うたびに「これなんだい、切れないね~!」「切れないと危ないんだよ」と仰る入居者さんがありました。当時は「そうかな?」と思いましたが、鉄の裁ちばさみと比べたら納得です(^^;)。今のお若い方は鉄の刃物を触る機会があまりないと思いますが…。

安全な道具のヒントは「進化」だけじゃなく、過去にも転がっているような気がする今日この頃です。