その21 職業としての「介護職員」
先日、私のもとに「東京都福祉保険局生活福祉部地域福祉推進課福祉人材対策係」という、お経のように長い部署から一通の封書が届きました。都庁、お役所からのものです。なんだろうと開けてみて、ビックリ仰天いたしました。
封書の中には介護職員への就職の斡旋情報、ブランクがある人には無料の講習案内、はてはフリーダイヤルのカウンセリング番号まで…「これでもか」と言わんばかりのサービス情報が満載されていました。いくら人手不足とはいえ、至れり尽くせりというか上げ膳据え膳というか…。(電話で確認したところ、都の初任者研修修了者8千人に送付した、とのこと。現役か退職後かは調べていないそうです)
頼みもしないのに国が再就職のメンドウを見てくれる、これが「親方日の丸」の力なのか…と呆れるほどに驚きました(是非はともかくとして)。
私事でスミマセンが、フリーランスを経験した身から言えば天国のような話です。社会保険は入れない、国民健康保険は高い、たまに忙しく仕事をすれば正直に税金も増える…、さてひとたび仕事がなくなれば、失業保険もなんにもナシ。これがフリーランスです。私は5年前介護に転職いたしましたが、その心中は八万介助先生の『49歳未経験すっとこ介護はじめました!』(小学館)導入部とまったく同じでありました。フリーにとって仕事がなくなる時は、大げさに言って「この広い東京に味方がひとりもいない」といった心境になります。
フリーランスだけではありません。規制緩和この方やれ契約社員だ、派遣社員だと「正規」以外の働き方が増えていますが、多くの人は「いつ仕事がなくなるか」といった不安が潜在的にぬぐいきれないことでしょう。痛いほどわかります。いえ今や正社員ですらそうかも知れません…。
介護職員は一般に給料が安い、といわれます。たしかに手取りだけ見れば多いとは言えません。フリーターでも稼げる程度だと感じる人もあるでしょう。
しかしこれは社会保険や年金、資格取得や研修費、さらには「再就職のメンドウ」まで込みの値段です。保護と安全性を鑑みればとてもフリーターとは比べ物になりません。
元が税金であるゆえ是々非々はありましょうが、「職業としての介護職員」はこれほどまでに保護されている…という側面も、事実知っておいて損はないと思います。
(追記)
蛇足ながら、せっかく再就職した人がまた辞めないように「どうしたら介護職は長続きできるか」・・・のほうにそもそも力を入れて欲しいと思いますが・・・。