その52 知らなかった味

 

介護職員になって初めて経験したことは数多くあります。

なかでも、介護職員にならなかったら一生やらなかっただろうと思うのは「食べ物をミキサーにかける」という作業です。
いえ、私も普段からミキサーくらい使いますがw。普通に野菜や果物に使うのではなく、肉、魚、煮物、サラダなどなど…すでに出来上がった料理をミキサーにかける作業のことで、歯や嚥下(飲み込む)の弱った人のために必要な支援です。

ご想像の通り、見た目は良くありません。味も変わってしまいます。煮物などは具材ごとに分けてミキサーしても、どうしても混ざってしまいます。「なんとかミキサーしても美味しく、キレイに食べてもらえないか」…は、いまだに解決されぬ悩みのタネであり、私もずいぶん色んなものをミキサーし味見させてもらいました。

…ところがなかには、たま~にですが「これは…ミキサーしてもなかなか美味しいんじゃないの?」というものがありました。ミキサーすることによってもとの魅力とは違う、別な美味しさがでてくるものもあったのです。

たとえば冒頭マンガに描いた鶏のから揚げ。出汁とマヨネーズでミキサーすると薄茶色のペーストになります。これは濃厚なソースというかディップのようで、普段から「野菜スティックに添えて」なんて食べ方もイケそうです、レバーペーストのように。

納豆も面白い。卵黄や大根など、少々水気のあるものと一緒にミキサーすると和風のつけダレのようになります。麺類と食べるならミキサーしたほうが良く絡んで食べやすいですね。ネバネバものはミキサーと相性がよく、普段は薄切りにするオクラも自然にトロミがついて使いやすい一品でした。

先輩に教わったところではシチューのミキサー。具の姿は見えなくなりますが、その分味が完全に馴染んで、先輩曰く「濃い味のポタージュみたい」。これも確かに美味しいものです。

実際私は、上記3つは普段から自分の食事によく使っています。

もちろん、誰だって普通の食べ物を自由に食べられるのが一番、楽しいでしょう。私もそうです。
が、「ミキサー食ってマズいな」と単純に思い込むのもまた違うなと今は思っています。「マズいけど仕方ない」という結論になってしまいそうで…。できれば、自分で食べても美味しいものを提供したいですよね。

「ミキサーしてもおいしもの」「ミキサーしたらもっとおいしくなるもの」がきっとまだまだあるはずで、せめてそういうものを見つける工夫は続けていきたいなと思っております。
(自慢のミキサー料理のある方、私に教えてくださいw)

(追記)
そば屋さん夏の定番メニュー「冷やし〇〇ソバ」。なめこ、おろし、納豆、オクラ、揚げ玉…いろんなバリエーションがあり大好物なのですが、いかんせん「必ずソバに絡まず残る具」が存在し、実に毎回損したような情けないような気分に襲われますw。

納豆ミキサーを覚えてからはサッパリ注文しなくなってしまいました(笑)。自宅で原価で食べています。