その225 防災用品の日常使い
災害時用に用意したものを、日常で試してみたことはおありでしょうか?
例えば非常用食料。常温で保存がきくレトルト食品や火がなくても温められるもの、缶詰、乾燥食料などなど。買った時は心強いような気が致しますが、実際に使ってみようと思うと意外な操作が必要だったりしますね。
缶詰は保存期間を長くするためプルトップではなく「缶切り」が必要な場合もあります。火がなくても温められる、と書いてあるもののなかには「水が必要」な場合もあります(石灰などの化学反応を利用するもの)。乾燥食料は概して大変に固く、しっかり水で戻さないと食べられませんが非常時にそうした余分の水、また「水戻し用の器」があるかどうか…。
実際にパッケージを開けて、ひとつふたつ試してみないとわからないことがたくさん出てきますよね。

介護施設でも、年に一度くらいはこうした「非常用食料の試食」がありました。防災用に施設に備えられている食料も、長いとはいえ数年で賞味期限が来ます。その入れ替え時に、実際に食べてみるのですね。
介護施設の利用者さんは歯や消化機能が弱まっている方も多いですからこれも大事な仕事の一つでありました。固さ、飲みこみやすさ、調理のしやすさ。またあまりにも味が合わない場合、使うのは非常時ですから代わりのものはないわけで、それも好き嫌いと笑ってはいられません。実際に食べてみると改善したいこと、変更したいことなどが次々と出てきたものでした。
ご家庭でも同じだと思いますね。
さて筆者は今年の1月、こんなお話を書きました。
冒頭で最近話題の「ポータブル電源」について書きましたが、どうもここ数か月でお値段がぐっと安くなったようです。去年までは機能によってさまざまですがザっといって10万円ほどしていたものが、7万円、5万円、小さいサイズのものなら3万円を切ってきました。
筆者も思い切って一番安いサイズ(笑)のものを買ってみました。蓄電量もそれなりで、重さは4キロほどの小ぶりサイズです。
そして実際に使ってみて、さまざまに思うところがありましたね。
まず本当にそもそもですが、「電源だけあっても役には立たない」ということがすぐわかりました(^^;)。
ポータブル電源を活かすには「電気機器」がなければなりません。電気機器にはスマホなり照明なりそれこそいろいろありますが、実際に災害が起きて避難所へ…というときこのポータブル電源とさらに電子レンジだの扇風機だのを持っていくのかと思うとさすがに現実味がありませんね。
スマホの充電なら乾電池でもできるわけですし。避難所には個人が自由に使えるコンセントなんてないでしょうから、ポータブル電源をもっていっても充電ができません。使い切ったら終わりです。
するとこれは基本的には「充電のアテがある場所」で使うもので、自宅か、あるいは自家用車の中で使うのが現実的なようです。筆者の家には自動車がないので家の中だけですね。
ただ自宅には電気はもちろんあるわけですし、じゃあいつ来るかわからない停電の時しか使い道がないのかな?などと頭を捻ってしまいましたがw…。
悪いことばかり書いてしまいましたが、もちろんそんなことはありません。
試しにポータブル電源をもって庭に出てみたら、「あ、外で電気工具が使える!」ということにすぐ気が付きました。工作をしたり、大きなゴミを解体するのに庭で電動ドリルを使いたいと思っていたのですが、外にコンセントがなくあきらめていたのですね。そうそう、照明も大きな明るいものを接続して夜でも作業ができます。
これからの季節は蚊が心配ですが、ついでに殺虫ライトも接続できます。扇風機もつきます。
こうなると、ポータブル電源は「コンセントのない場所でも電気機器が使える」という著しい強みをもっていることが実感されてきました。
災害時は野外活動も多いでしょうし、安物の電動ドリルでもゆがんだドアをこじ開けるくらいはできます。これはやはり心強い味方と言わざるを得ません。電気の保存量そのものより、「機動力」がポータブル電源の強みのようですね。
新しい防災用品を過信せず、適時適所で使うにはやはり実際に持っての様々なシミュレーションが必要なようです。

ホント、手に取って使ってみないとわからないことだらけだなと痛感した次第でした。