その156 「虫」に関するあれこれ

先ほど、自宅の隣室から「ギャー!」の悲鳴とナニモノかが倒れる音がしたので、行って見たら(介護職員経験者は「転倒」の気配に敏感です)、家人が「窓を開けたら、同時に入ってきた!」と床を指さしていました。

当方、てっきりスズメバチでも入ってきたかと身構えましたが、あにはからんや、それは一匹の無害なるカメムシ君でありました。驚きすぎだろう、とも思いましたがw虫は個人的好き嫌いの激しい分野ですので、筆者が黙って処理をいたしました。
引っ越し前はマンションの5階に住んでいましたので、ウチに昆虫が入ってくるなんて確かに久しぶりだなあと感慨もありましたが…。

さて介護施設は清潔を保たれておりますので、害虫を見かけたことはほどんどありません。筆者の勤めた小さめの3階建てグループホームでも、日々の掃除のほかに害虫対策専門の業者さんが入っておりました。

よく考えると、筆者の生まれた40年前の田舎(筆者の故郷は群馬県です)では、普通のお家にハエくらい少しは飛んでいたものですが。今はどこにいっても見ませんね。今年の頭まで住んでいた東京のマンションは1階に共同ゴミ捨て場があり、常にゴミが置いてあったのに、害虫の姿を見たことは11年間
ほとんどありません。せいぜい、夏に小さな羽虫が飛ぶくらいでした。

虫にとっての環境はずいぶん変わっているのでしょうね。

ただ、それでも「油断をすると」介護施設に虫が入ってしまう場合があります。それは「洗濯物についてくる」ケースです。夏にかけて洗濯物は虫たちに適度な湿気と日陰、また暖かさを提供するようで、うっかりするとタオルの間で一休みしていたりします。それはハチだったり、ハネアリだったり、件のカメムシだったり…。

よく晴れた日の午後、入居者さんと一緒に洗濯たたみをするのは忙しい業務の中にあって一服の「楽しい時間」なのですが。そんなときカメムシ君がこんにちわして虫が嫌いな職員がビックリ仰天な一幕も…(^^;) 洗濯物はよくハタいてから取り込まなければいけませんね(笑)。

ただこれが笑ってばかりもいられないのは、いくら驚いたからといって「うわあ!」なんて大声を上げてはいけません。介護施設では、歩行が不安定な利用者さんもたくさんおられます。もしそんな方が階段に登ろうとして、大声に驚いて振り向く、よろける、転倒…というケースは十分にあり得ることです。

これも個人的な好き嫌いの領域ではありましょうが、筆者の経験から言うと虫に驚くのは「利用者さん」より「職員」のほうが多いようです(^^;)。利用者さんはハネアリだろうがカメムシだろうがヒョイとつまんでポイと捨ててしまわれます。嫌いな方もおられるでしょうが、やはり経験がモノを言うのでしょう。いちいち大げさに驚いたりはされませんでした。

筆者には思い出深い職員さんに、何事もてきぱき手際よく、後輩の面倒見もよく、なにくれとなく教わった中年女性の先輩があります。その先輩の唯一の苦手は「虫」だそうで、「虫だけはダメなのよー」といつも笑って言っておりました。
ある時、取り込んだタオルからハネアリが現れました。先輩、素早く左手で口を押えて
「声」が出ないようにされていましたね。「プロだなあ…」と思いました(^^;)。今でも尊敬しております。
(まあ、その後利用者さんのいないところで「梅、ただちにあの虫を仕留めなさい」と指示をもらいましたが…(笑))


(これは自著『ボクは介護職員1年生』(宝島出版)オマケ4コマ漫画ですが、その時のことをはしょって描いたものです(笑)…我ながらよほど印象に残ったのですね。)

介護には「家に閉じこもらず外に出て、四季を感じ、脳にいい刺激を…」という面もあります。が、花咲く春・夏には当然虫だって寄ってくるわけで…wそれも季節のうちと楽しむ度量も必要なのかもしれません。

清濁併せ呑む泰然さにおいては、職員より利用者さんのほうが何枚も上手なようだと感ずる夏であります。