その210 熱中症、被害は「災害級」

今年(2024年)の夏は暑かった。
 筆者がこれを書いているのはまだ8月なのですが、そう言い切っていいと思います(-_-;)。この文章が載るころは9月中旬、少しは涼しくなっているでしょうか?(なんだか毎年こんなこと言ってる気がしますが…w)

 「熱中症」という言葉ももうすっかり定番化して、毎年のように「脱水注意!」「エアコンを適切に利用して」ひどいときには「不要不急の外出を控えて」と言われるようになりました。
 正直、耳にタコと申しましょうか聞き飽きた感があります。

 そんななか今年7月8日、日本救急医学会は異例の記者会見を開き、暑い時間帯の不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。学会の理事を務める横堀医師は「最近の日本の暑さは『災害級』」「患者の数は自然災害による被害を超えかねない状況」と話したそうです。

 ここでもう一度、聞き飽きたといわず「災害級」なる言葉の意味をしっかりとらえ直してみたいですね。

 災害。お読みの皆さんはどのケースを思い浮かべるでしょうか。東日本大震災では1万人以上の死者、阪神大震災では5千人以上の死者が出てしまっています。熱中症の被害とは、それほどのものなのでしょうか?

 熱中症の死者数の推移を検索してみました。

 これは厚生労働省による「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年)」です。

 死者数だけ見てみますと、
1995年318人、2000年207人、2005年328人、2010年1731人(!)。以下2011年から年ごとに948人、727人、1077人、529人、970人、621人、635人、1581人、1224人、1528人、755人…そして2年前の2022年が1477人です。

 特に近年では1000人を超える被害が珍しくありません。コレが毎年。死者を単に「数」でどうこう言うのは慎みたいところですが、これは確かに5年で「阪神大震災並みの死者をだしている」ことに…現になっているんですね。10年で「東日本大震災並み」です。

 次はもっと身近なところで比較してみましょう。
たとえば交通事故の死者数を見てみますと、これは素晴らしいことに近年とみに減少し去年(2023年)は発生30万7930件、死者は2678人となっております。1か月で200人ほど。筆者が生まれた昭和の終わりは「交通戦争」と言われ年に1万人近い死者があったので、本当に減ったものですね。

 一方、熱中症は死者1000人といってもそのほとんどは当然、夏に集中しているでしょう。仮に夏を3か月としたら一か月で333人。数字上では交通事故の1,5倍の死者数です。
 夏に限って言えば「熱中症で亡くなるほうが交通事故より多い」のが実情のようです。これは…いや、実に驚きです。
 熱中症による救急搬送は多い年で10万件といわれますから、夏に救急車を見かけたら交通事故より熱中症の可能性の方が高いわけですね…。

 また死因が「熱中症」と診断されなくても、暑さが原因でさまざまな疾患が悪化するなどの影響も考えられますので…実際には数以上の脅威があると思われます。
 そうした被害者が集中的に出れば冒頭、救急学会の方々が「災害級の被害!」とおっしゃるのもむべなるかなと言ったところですね。医療機関の対応も災害時なみでしょうね。

 やっぱり熱中症は「災害」といって大げさではないようです。

 もう夏は認識を変えて、とにかく「安全にやり過ごせればいい」という季節になってきたようですね…(-_-;)だって災害ですからね。まずは命ですよね。救急車のお世話にならなかったら上出来、くらいの認識で。
 身体に負担のかかること(仕事、勉強、スポーツの大会とか筋トレやダイエットとか)はみんな秋以降と考え、夏は安全第一でないといけない気がします。


  
 いいかげんに社会全体で「暑すぎる日は学校、会社は休み」とか「リモートワークで」とか大きく舵を切ってほしいと切望するばかりです。ついでに言うと木も切らないでほしい、いやむしろ植えてほしいと思いますが…(-“-)。

 それで倒れる人が減れば、多くのリモートでは済まされない「出勤せざるを得ない仕事の人たち」のために救急車も医療機関も余裕ができると思うのですがね。
 
 しかしまあ毎度申しますが、やっぱりまずは自分が倒れないこと(^^;)。
 
 「災害」の去る秋まで、あと一歩です!

(余談)
このマンガは中央法規出版社のサイト「けあサポ」にむかし筆者が寄稿したものですが…

いま見るとゾッとしますね(^^;)。よく命があったものです、幸運に感謝しますw…。