その203 そのお漬物は「発酵食品」でしょうか?
6月。介護現場ではなにより食中毒に気を遣う時期です。ご家庭でも同じですよね。
管理栄養士さんに習ったところではまず当然、消費期限を守る。食品の温度管理や密閉を徹底する。なるべく火を通す、生食のものは良く洗う。調理後2時間で食べきる…そして近年は、さらに「腸内環境を良好に保つ」ことも食中毒予防として注目されています。
乳酸菌を代表とするいわゆる善玉菌を腸内に多く保ち、多少の悪玉菌が入って来ても負けない体をつくる。特に腸内の乳酸菌は加齢とともに減少しますので中年以降は意識して日々マメに摂ることが肝心です。「腸活」なんていいますよね。
その乳酸菌を豊富に含むのが発酵食品。ヨーグルトやチーズ、納豆やお漬物が体に良いと言われる大きな理由です。
ことに手軽にできて、食物繊維も乳酸菌も同時に取れる「お漬物」は腸内環境の強い味方になるものですが…。
実はその「お漬物」に、今年(2024年)6月、大きな規制制度が適用されること、ご存じでしたでしょうか?
その規制とは、食品衛生法の改定。具体的には漬物の製造に国際的な衛生管理手法(HACCP)に準拠した加工施設の設置が義務付けられ、設置ができない場合営業許可が下りないことになりました。
その目的は「食中毒防止」だと言います。
漬物の製造者には手作りの農家さん、個人商店も多くあり、莫大な費用の掛かる加工施設の設置など不可能で事実上廃業になってしまう…とニュースにもなっていましたね。
筆者はこのニュースを聞いたとき、すぐ「おかしいな?」と思いました。
だって漬物はもともと「保存食」なのです。
お腹を壊さないようにと乳酸菌たっぷりに作られたものを「食中毒防止」のために規制する…なんだか矛盾しているとは思いませんか?
気になったので「漬物 食中毒」と調べてみたところ、原因が載っておりました。
今回の法改正は漬物から「O-157」に感染するケースが多いことが原因だそうです。その具体例をよく見てみますと、
平成12年、埼玉県でカブの浅漬けから感染。
平成13年、埼玉と東京で和風キムチから感染。
平成14年、福岡でキュウリの浅漬けから感染。
平成24年、北海道で白菜の浅漬けから感染。
(参考:財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
https://www.kenko-kenbi.or.jp/columns/food/2052/)
…みんな「浅漬け」なんですね。
「和風キムチ」というのも、冒頭マンガに描いたように野菜をキムチ味に和えた浅漬けのことです。
調味液に短期間漬けただけの浅漬けならば「発酵食品」ではありません。保存性は低い。当然、事故再発防止のため衛生管理を徹底してほしいとは思います。
が、その「浅漬け」と、発酵食品を含む「漬け物」全体とを同じ規制にする必要は果たしてあるのでしょうか(-_-;)。非常に疑問です。
当社の本社がある東京荒川区は、昔から韓国の方が多く住む地域です。
商店街の路地裏には、韓国人のお婆ちゃんが指先を真っ赤にして作った自家製キムチが並ぶお店も多々あるのですが、これがもう香りから味からスーパーのキムチとは全く違うんですね!
既製品の漬物はキムチに限らず菌の働きを止めているものが多いのですね。菌が生きたままだと発酵が進んでしまい、味が変わりますから、品質を一定に保つため熱処理などで菌を失活(つまり死んでいる)させているのですが。実はそれだと本来の発酵食品の威力が半減しているのも事実です。
「生きて腸まで届く」と言われるように、生きたままの手作りの乳酸菌漬物は本当に美味しく、お腹も快調になると食べて感動した覚えがあります。当社の管理栄養士も「キムチは本場のにしなさい!」と強調するほどです(笑)。もちろんキムチだけでなく他の発酵食品も同様で、腸内環境には生きた菌を選んでいきたいものです。
筆者自身それ以降漬け物の手作りにハマり、いまでもぬか漬けを世話していること何度も記事にしている通りですw。
このような素晴らしい健康食品、手作り漬物が規制によってお店から消えてしまうのは大変悲しい…いや悲しい以上に、健康に対する大きな損失だと思いますね。法律も規制するならちゃんと科学的根拠に基づいて、危険のあるものとないものをしっかり区別してほしい。食文化の保存のためにも、今からでも発酵食品は除外して販売を許可してほしいと切望しますが…。
しかしこうなったら、もう自分でつくるのが一番ですね。腸も自衛の時代です(笑)。
今年も食中毒に負けないよう、毎日ぬかをかき混ぜたいと思います!
(余談)
ぬか漬け制作体験、再掲しておきますw。