その92 入れ歯の日

10月8日は、入れ歯(1,0,8)の日だそうです。行きつけの歯医者さんに教わりました。
介護現場では「義歯」(ぎし)と呼びます。介護職員になりたてのころ、「〇〇さんの義歯を預かって」といわれても何をしていいかわからなかった思い出がありますw。

杖、車椅子、補聴器やペースメーカーなどなど、医療介護では失った体の機能を代行する様々な器具があります。その中でも、入れ歯ほど身近なものはないのではないでしょうか。
私が現場でお会いした利用者さんはほとんど全員、入れ歯を使っておりました。使っていないのは、ごく一部のすでに口から食べ物をとることが難しい人たちだけです。

入れ歯の歴史は非常に古く、なんと紀元前より存在したと言われております。古くは動物の歯や骨から、また亡くなった人間の歯を再利用していた・・・など、ちょっとコワイ記録もあります。
しかし「ちゃんと噛める」完成度の高い入れ歯が出回ったのはかなり時代が下ってからのようです。アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンもデキの悪い入れ歯に苦しんだと記録にあります。

面白いので調べてみたら、嬉しいことに日本は昔から入れ歯先進国だったようです。

実物の残る世界最古の総入れ歯は1538年に74歳で亡くなった仏姫(ほとけひめ)なる尼僧のものだそうで、和歌山の願生寺に現存しています。写真を見ると、形は現在の入れ歯ソックリ!材質は工芸品や将棋の駒によく使われる黄楊(つげ)の木。色は真っ黒ですが、当時の習慣「お歯黒」のためだそうです。

もう一つ現存する有名な入れ歯に、なんとあの柳生宗冬(むねふゆ)のものがあります。映画や時代劇でお馴染みの隻眼剣士、柳生十兵衛!・・・の、弟さんです。兄貴ほど派手に有名ではありませんがこれまた無類の剣豪で、将軍さまの剣の先生を勤め、柳生家を旗本から大名に復活させたエライ人。いやあ、こんな凄い人まで入れ歯のお世話になっていたとは。

宗冬の入れ歯は更に手が込んでいて、黄楊の台に歯の部分は白い蝋石を使い、見た目もホンモノらしくなっています(ネットで画像検索すると見られます、驚きの完成度です)。

 

江戸時代には入れ歯製作の専門職も一般化し、かなり多くの人が入れ歯を使っていたようです。欧米諸国に先駆けること百年以上という早さで、これは誇ってもいいのではないでしょうかw。

・・・まあ、できればいつまでも自分の歯で食べたいのはやまやまなのですが。「歯の健康寿命」というのはどうしても50~70年足らずということで、急に寿命の延びた日本人には入れ歯は不可避アイテムと言えそうです。

とりあえずは電動ハブラシで歯を磨きながら、入れ歯の更なる発展に期待をかけようと思います。

(追記)
スポーツや格闘技の世界では文字通り「歯を食いしばる」ため、奥歯が磨り減ってしまうことも多いそうです。噛み合せが悪いと力がでない由、重量挙げの選手などは足繁く歯科医に通うそうですが。

柳生宗冬も入れ歯がなかったら、剣を振るにも力がでなかったことでしょうね。面白いモノです。