その149 100円ショップ店員さんの「機転」

以前も少しお話しましたが。最近スーパーやコンビニも、お金を手渡しではなく機械に投入するタイプが増えましたね。

あの操作に戸惑っている高齢者もたまに見かけます。操作を誤り、機械がトラブルを起こすと結局店員さんを呼ばねばならず…効率化もなかなか難しいものですね。

介護職員として仕事で買い物に付き添っているとき。やはり細かいお金の計算、支払いが難しくなっている高齢者の姿を毎日見ておりました。職員としてはそこでゆっくり考えて、脳のリハビリの機会に…と思うのですが。それはそれ、レジには急いでいる方も並んでおられますので。状況を見て手伝ったり、周りの迷惑にならないように心がけてはおりました。

「障害があっても自立できる社会」「認知症になっても暮らしやすい社会」と口で言うのは簡単なのですが…。そのためにはどうしても周りの協力が必要で。協力するには、周りにも「協力できるための余裕」がなければ難しいと思います。
その余裕とは、お店なら店員さんが多いとか。他のお客さんなら少しくらいレジを待ってあげられるとか…なのでしょうが、万事緊縮の雰囲気漂う世の中。
その「余裕」を生み出すためにかかる「コスト」をどうしたらいいのでしょう…と、また難しいところです。

困っている人のために店員さんを一人増やせば、そのコストは商品の値段に跳ね返って、このデフレ時代には大変不利になってしまうでしょうし。どうしてもコスト、お金の問題は避けて通れませんね。
介護保険・社会保障費とはそのコストの最たるものですが。

ところで先日、休みの日にある100円ショップに立ち寄りました。二つあるレジは無人。店員さんは一人のおじいさんに付き添いながら「爪切りはいまここにあるだけ」などと説明していました。(ああ、店員の少ない時間に大変だな)と思いながら、自分の目当ての商品をもってレジに並ぶと、目の前はそのおじいさん。案の定、お金の計算に手間取り、店員さんも「10円玉ならあとよっつ…」などと説明しています。

そしてその時。悪いことに、自分の後ろには「明らかに急いでいる会社員さん」が並びました。スマホを見ながら、指を鳴らして明らかにイライラしておられる。仕事中なのでしょう、無理もありません。

その時の店員さんが冴えていました。

おじいさんを「ゆっくりお金数えていて!」とそのままレジに残し、もう一つのレジを起動して「こちらにどうぞ!」と言われたのです。これにはビックリしました。

会計が遅いのは店員さんのせいではないし、何も一人で二台もレジをこなす義務はないはず。待たされるのはイヤですがこの場合仕方ないこと…と思っていたので、なんだか虚を突かれた気分です。

幸い自分は急いでいなかったので後ろの会社員さんに先を譲ると、会社員さんも店員さんもあからさまにホッとしたお顔でした(笑)…店員さんも気になっていたのでしょうね。

しかしこの解決法は鮮やかです。
おじいさんにはゆっくり数える時間を与えつつ、待っている時間をうまく利用して空いたレジで急ぎの人を同時に捌く。特に「お金を数えている間のおじいさんには見守り不要」という見極めが素晴らしいですね。パズルがうまく解けた時の快感ですw。
昨今のワンオペ、なんでも一人でこなせという風潮を助長したくはないですが…それにしてもお見事でした。

なにかこういうところに「コストをあまりかけなくても今よりうまくいく方法」のヒントが隠れているような気がしてなりません。見逃しているムダな時間、要らない手間、順番を変えるだけで解決する何か…。

介護職員として、なんだか印象に残る店員さんでした。