その177 よく見えてすぐ手に取れる場所に置く

筆者の勤めたグループホームには掃除用具がいろいろな場所に分散して置いてありました。
ホウキが3本、玄関に。共用の布巾や雑巾がキッチンに。2階のスタッフルームにもホウキとチリトリ、電気掃除機、使い捨ての拭き掃除シートなど。トイレやお風呂の掃除用具ももちろんその場に置いてありました。

普通、施設の掃除用具はロッカーなどに収納され、見えるところには置かないものですが…。

あるとき先輩に「こういう置き方には理由があるんだけど、わかる?」と聞かれました。理由とはこうです。

「掃除をしましょう!」と声をかけても、それで動き出す人は少ない。認知症は言葉を理解し次はこうと計画・実行するのが難しくなる病気である。しかしホウキを見て、手に取ればそれを使って床を掃くことを思い出せる。言葉だけでなく目で見て、手に取って行動に移すことがリハビリになるのだと。

そのためには、よく見える場所、すぐ手に取れる場所に道具がないといけない。認知症により聞いた言葉を覚えられない方もあるし、「待つ」のが苦手になる症状もある。なので掃除用具はいろんな場所に見えるように置き、すぐ手に取れるようにしてある…とのことでした。

筆者は「なるほど、これはいい!」と思いました。実は当方、脳になんの障害もないのですが、非常に忘れっぽいのです(^^;)。

自分のうちでも例えば脱衣所の床を拭こうと思い、台所に雑巾を取りに行くと、とりあえずその辺を拭き始めて当初の目的(脱衣所)を忘れる…などしょっちゅうです。若いときからそう。こういう方、健常者にも結構おられると思いますね。自分でもほとほとあきれていたのですがw…。

なので早速、自宅でもマネすることにいたしました。いまでも我が家の掃除用具はそこかしこに分散しておりますが、おかげで掃除だけは気づいたときすぐ出来るようになりました。

実は最近、この習慣のおかげで筆者は大変なトクを致しました。それは、「歯磨き」についてです。

去年の7月このコーナーで描きましたが…

その159 「電話」の重要性

https://recruit.enzeru-corp.jp/column/2022/08/01/1034

あれ以来、歯痛に懲りた当方は3か月ごとに歯の定期クリーニングに通うようにしております。去年の9、12月。今年は3月に行って来ました。

筆者は子供のころから、歯磨きを褒められたことがありません(-_-;)…ニガテなのです。歯並びも悪いし、前述のとおり忘れっぽいもので。しかし3か月ごとに検診となると歯科衛生士さんに「わずか3か月でこんなに汚したんですか」と言われるのもシャクです。そこで絶対忘れないように、本気を出して歯ブラシを3本買いました(笑)。

一本は洗面所に。もう一本は台所の流しに。最後のはお風呂場に置きました。こうなればいかな忘れん坊でもイヤでも目に入ってきます。例えば食事が終わって、お皿を洗ったついでにシャカシャカ。お風呂に入って、手持無沙汰の湯船でゴシゴシ…。一日に最低一回は、落ち着いて歯磨きする習慣がだんだん身についてきました。(湯船が一番多いですね。)

すると生まれて初めてですが、歯医者さんに「よく磨けていますね」と褒められました!
定期健診で一応クリーニングはしますが、痛みもなく、歯医者さんのあの尖がった器具で掃除されてもまったく歯ぐきから血が出なくなっております。初めてですね、こういうのは…。
330円(歯ブラシ3本ぶんの値段)で、40年間叱られ続けた歯磨きが改善しました(笑)。

(歯医者さんに教わった歯磨きのテクニックは、これひとつだけです(笑))

40歳を過ぎて、医者に「健康」と呼ばれる場所が増えるのは大変なトクで嬉しい限りです。

「よく見えてすぐ手に取れる場所に置く」

介護現場以外でも、非常にオススメな習慣ですよ!(‘ω’)