その176 よくわからないものはふつう、食べたくない

すっかり春めいてまいりました。

このコーナーでは何度かお話しておりますが筆者はこの季節、ヨモギやツクシ、ドクダミ、スギナなどの野草を摘むのが趣味になっております。野草の楽しみ方はグループホームで入居者さんに教わりました。入居者さんの子供の頃、草餅づくりの思い出話などを交えながら。

ツクシは煮物。ヨモギやスギナはお茶にしたり、ドクダミはお風呂に入れたり。それぞれ楽しんでおりますが、もちろん自分だけの趣味で他人様に勧めたりはいたしません(笑)。食べ物はなにかと注意が必要ですからね。採ってきたものに間違いがなくとも、体質やアレルギーの心配もありますし。

筆者が子供の頃、よく父親と山に山菜取りに行きました(筆者の生まれは群馬県です)。当方はキノコの「チチタケ」専門係でした。ご存じの通りキノコは危険なものもあるので間違えたら大変です。その点、チチタケはカサを破ると白い乳液のようなものが染みだして確認が容易でした。…しかしそれでも、子供にキノコ採りをさせる父親というのも時代ですかね…おおらかだったんですね(笑)。

思えばこのときに父親から「知らないキノコ、いや知らないものは口に入れるなよ!」と強く教わった覚えがあります。まして他人に勧めるなどはもっての外ですね。

…しかしこの頃、世間ではなんだかよくわからない食べ物が推されていて…当方少々困惑気味です。それはいわずもがな、「コオロギ」なのですが。

去年の11月、コオロギパウダーを使った給食が徳島県の小学校で出たというニュースが流れました。すぐに賛否両論、意見や批判が寄せられましたが、今年になって「コオロギには毒があるのでは?」「漢方では微毒といわれている」などの情報が飛び交い、批判的な意見が多くなっております。毒の真偽は筆者にはわかりません(何しろ食べたことがないものですから…(^^;))が、よくわからない食べ物に不安の声が上がるのは当然かと思われます。

いちおう、内閣府の食品安全委員会はこの度使用されているヨーロッパイエコオロギについて「安全である」と結論しているそうです。

が、なんと言いましょうか。そういう問題ですかねという気がしてなりません。安全ならコオロギ食べたいかと言われれば、やっぱり鶏肉のほうが食べたいです。筆者は(^^;)。

長引くコロナ禍で衛生観念が高まっている昨今です。多くの人がウイルスやワクチンも含め「身体に入るもの」の安全性に敏感になっています。
そのうえ先月コラムにした「回転寿司問題」をはじめ、食品衛生も大いに意識が高まっています。

一部ではコオロギに対する批判を「昆虫食差別では?」とか「いやなら食べなければいい!」という識者もあるようですが(何をそんなに怒っているのでしょうか…)それもそういう問題じゃなくて、差別とか好き嫌い以前に

「よくわからないモノを食べるのは不安だ」

という至極まっとうな肌感覚から来るものなのではないでしょうかね。

もう他に食べるものがない!という危機的状況ならともかく、一方では牛乳を大量廃棄させたり牛を殺処分させたりしているような現状です。どう考えても牛肉、牛乳を食べて酪農家さんを手助けする方が合理的だと思いますが…。

今年3月には、一部の製品にコオロギを原料に使っているパン会社に対する不買運動まで発展しました。うーん、「いやなら食べなければいい」というなら、パンのように日常的に食べるものには混ぜないでくれと筆者も正直思います。

利用者さんと一緒に買い物に行って、よしパンを買おうというとき。介護職員ならどうしても(安全だと言われていても…でもまあ、一応違う会社の製品にしとこう)と思っても仕方ないのではないでしょうかね。それは差別とか不買運動とかじゃなくて、職業的に責任があるんですからどうしても「不安要素のない方」を選ぶでしょう。

そういう安全に対する肌感覚は、大事にした方がいいような気がします。

(余談)

ウチで飼っている2匹のネコは去年の夏、家の中に虫が入ると喜んで追いかけていました。が、一度カメムシで痛い目(というか臭い目w)を見てから、虫に対してかなり慎重になりました。
ネコですらこうなのですから、まして人間が未知の食材に慎重、批判的なのも当然だと思いますがね…。