SPECIALIST EPISODE 01
理学療法士
田中 義行YOSHIYUKI TANAKA
入居・通所事業部/事業部長付
2013年3月 中途入社
相手を深く知る。それが最も大切な介護技術の基本。
私は現在、北海道から沖縄まで日本中の介護施設を回り、理学療法士の立場から介護技術の研修・講演を行っています。自社の研修も含めると、その数年間現場に直接関わった施設さんは200以上。過去には専門誌の連載や、介護技術の書籍を書いています。それらの活動の中で私が最も伝えたいこと。それは「相手を深く知る大切さ」です。
全国の施設を回り感じることは、介護とリハビリの立場でご利用者を見る視点が違うこと。介護の方は、ご利用者の生活歴や家族歴、趣味・嗜好など“生活背景”をよく見ています。その反面、ご利用者が「介護を必要とする」原因になる、病気・障がいの詳細など“身体状況”については詳しく知らないことが多いのです。介護を行う上で身体状況の重要性を伝えることが、理学療法士である私の役割と言えます。
相手を知らない介護は、能力を奪う。
介護を必要とする方の多くは高齢者であり、また病気やケガにより障がいを抱えているケースは珍しくありません。当然、高齢者が本来の動き(病気・ケガがない状態と同じ動き)を取り戻すのは難しい場合が多くあります。その方が自分らしく生きていくにはどうするか。重要なのは、本来の動きを再現するのではなく、体に残された能力を引き出すことです。
そこで必要となるのが、身体状況の理解。相手のできること/できないことの把握です。例えば、立ち上がりは苦手だが歩行はしたいという方がいたとします。介護者が身体状況を理解していないと「どうやって歩いてもらうか」と判断するでしょう。歩行は上手な立ち上がりができてはじめて可能になるのですが、知らなければ必要以上に介助してしまいます。結果、逆に下肢を痛めたりして、歩くチカラを失うことも多いのです。相手の身体を知らないがゆえに、残された能力を引き出すはずが、知らず知らずに本人から能力を奪ってしまうこともあるのです。
介護者の負担が減ることは、ご利用者の利益にもつながる。
介護でもう一つ気を付けなければいけないのは、「やってあげた」「頑張った」という充実感。自分が苦労するほど生まれやすいものです。しかし、ご利用者の残存機能を適切に引き出せば、本人は楽に目的を達成できる。介護者は本人のチカラを借りるので、カラダへの負担も減ります。苦労を美徳と感じるのではなく、現場の介護者は正しい介護技術で、体を酷使せず、知識や技術を活用してご利用者の能力を引き出すのです。
ご利用者を深く知ることで、介護の現場はまだまだよくなります。私はこれからも理学療法士という立場から、ご利用者と介護者の負担を減らす介護技術を伝え続けます。