SPECIALIST EPISODE 02
介護福祉士
福井 幸成YUKINARI FUKUI
入居・通所事業部/部長代理
2007年6月 中途入社
大起エンゼルヘルプらしいエピソード
私が介護の世界に飛び込んだのは20代半ば。老人健康保健施設で介護職員を4年、生活支援相談員を3年、さらにグループホームで管理者を2年経験したのち、大起エンゼルヘルプに入社しました。入社後は小規模多機能施設、グループホームの管理者を経験。
他社を知り、さまざまな施設を経験した私が考える大起エンゼルヘルプらしさとは、「認知症の方の意思を大切にし、その方の生活を支える」こと。これからお伝えするエピソードは、当社以外ではまず耳にすることのない話だと思います。
帰りたい、という意思も尊重します。
それはグループホームに入居した80歳近い女性のお話です。彼女は独身で、長年一人暮らしをしていました。しかし、加齢とともに認知症が進行。一人での生活が困難となりグループホームに入居することとなりました。グループホームから自宅までは歩いて帰れる距離。毎日夕方になると「私、そろそろ家に帰るわ」と言い、グループホームを出て行きますが、私たちはそれを止めることはしません。それは、ホームから出るのを止められるのも、無理やりグループホームに連れ戻されるのも、彼女の意思ではないからです。本人の意思を否定することなく、帰ってきてもらう方法を取らなければいけません。
そこで私たちは、彼女を追いかけ、偶然を装い出会い、会話をする中で自然とグループホームに帰りたくなるように促していきます。自分の意志で「帰りたい」と思ってもらうこと。これが大切なのです。グループホームを出てから帰ってくるまで、絶対に本人の意思を否定はしませんし、騙すこともしません。少し時間のかかるやり方かもしれませんが、そこまでしてでも、私たちは本人の意思を大切にしています。
たまには、お寿司でも食べに行きませんか?
入居して4日目。その日も夕方になると彼女は自宅に向かい、あとから職員が追いかけるカタチで出て行きました。それから数十分。追いかけて行った職員から私宛に一本の電話が。
「福井さん、すみません。今からお寿司屋でビールを飲むので後で迎えに来てください」。
話を聞くと、その職員が「近くのお寿司屋さんでも行きませんか」と誘ったそうです。実は、彼女はそのお寿司屋さんの常連。そのことを知っていた職員が、毎日自宅に帰りたがる彼女の気分が変えれば、と思い取った行動でした。彼女としても、知り合いを行きつけのお店に連れて行けるとあって、夕飯はお寿司に決定。ただ唯一誤算だったのは、「あんたも飲みなさいよ」と勧められたビールを断りきれなかったこと(笑)。その職員はアルコールが飲めないため、酔う前に先回りして私に電話をした、ということです。
私はお寿司屋さんに向かい、店の前で待つこと一時間。店から出てきた上機嫌な彼女と、真っ赤になった職員。せっかくの楽しい雰囲気を壊さないよう気を配りながら、この後どうするか、彼女に聞いてみました。すると彼女は、「今日は(グループホームに)戻って寝ることにするわ」と満足そうに答えました。その日は、楽しい雰囲気のまま三人でグループホームに戻りました。
グループホームが、第二の家になった。
次の日から彼女に変化が表れました。それは、夕方になっても自宅に帰ろうとしないのです。話を聞くと「いつでも帰れるってわかったから、いま帰る必要はないわ」とのこと。お寿司屋さんに行ったことで、ここにいても自分らしい生活が送れる、と認識してくれたのです。
それは、グループホームが「連れてこられた場所」から「第二の家」に変わったということ。入居していても、お寿司屋さんに行ってビールを飲む、という彼女とってあたり前の生活を受け入れることで、安心して生活を送れるようになったのです。
このような話は、当社では決して珍しい話ではありません。「入居しているのにお寿司屋に行き、お酒を飲むなんでとんでもない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それがその方の本来のライフスタイルであれば、それを否定する理由はどこにもないと思います。常識や固定概念にとらわれず、認知症の方の意思を大切にする。その先にある本人らしい生き方を支える。それが大起エンゼルヘルプの介護です。